骨粗鬆症治療を行っている患者様から
「骨粗鬆症のお薬を内服しているときに歯科治療を行うと”顎骨壊死(がっこつえし)”になるの?」
「歯科治療の前には骨粗鬆症の治療を中断する必要があるの?」
という質問をいただくことが良くあります。
そこで今回は、皆さんが安心して治療に専念できるよう、歯科治療と骨粗鬆症治療の関係についてお話していきます。
そもそも顎骨壊死(がっこつえし)とは?
「顎の骨の組織や細胞が局所的に死滅し、骨が腐った状態になる事(※1)」と定義されており、歯肉の腫れや痛み、出血や膿がでるなどの症状が見られます。
(※1)厚生労働省,「重篤副作用疾患別対応マニュアル ビスホスホネート系薬剤による顎骨壊死 」,P6
骨粗鬆症の治療で顎骨壊死が懸念されるようになったワケ
2003年、アメリカで初めてビスホスホネート(骨粗鬆症の薬の1つ)に関連した顎骨壊死が報告されました。その後、日本においてもビスホスホネート使用患者の歯科治療後顎骨壊死が散見されたため、当初正確な情報もなく現場の混乱をきたしました。
骨粗鬆症治療と歯科治療は並行して治療が可能!(原則)
このような混乱を受け、日本骨代謝学会、日本骨粗鬆症学会、日本口腔外科学会、日本歯周病学会、日本歯科放射線学会の5学会によりポジションペーパー(各学会の統一見解を示した文書)が作成されました。そこには「原則として骨粗鬆症の治療と歯科治療は並行して治療可能」ということが明記されています。
- 現在(2023年度)のポジションペーパー(5学会の統一見解)による骨粗鬆症治療薬と顎骨壊死の関係
①原則として抜歯時に骨吸収抑制剤を休薬しないことを提案する
②侵襲的歯科治療は、可能な限り骨吸収抑制剤投与前開始前に終えておくことが望ましい
③骨吸収抑制剤の休薬を前提としない、侵襲的歯科治療も含む歯科治療の継続が望ましい
④歯科インプラントは他の危険因子を考慮する必要がある
顎骨壊死検討委員会,薬剤関連顎骨壊死の病態と管理:顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023,p15-p17
主治医と相談しながら、治療を進めていきましょう!
骨粗鬆症の治療薬すべてが顎骨壊死のリスクを有する薬剤ではありませんので、顎骨壊死を恐れて骨粗鬆症治療を避けたり、中断する必要はありません。当院では、骨粗鬆症の治療は健康寿命の延伸のためにとても重要な治療だと考えています。きちんと主治医と相談しながら、定期的な血液検査、骨密度測定や、薬剤の選択を行っていただければ過度に恐れることはありません。
また当院では、薬物療法をはじめ、運動療法・栄養療法をあわせて受けられる治療体制を整え、骨粗鬆症治療をトータルサポートしております。骨粗鬆症に関する知識が豊富な専門スタッフ(骨粗鬆症マネージャー)も多数在籍しており、患者様からの治療に関するご不安・ご相談に対応いたしますので、気になることがありましたらぜひご相談下さい。